子供用ランドセル

【名作絵本のご紹介コラム】贈り物としてのランドセル

【最終更新】2017/05/18

【名作絵本のご紹介コラム】贈り物としてのランドセル

ランドセルを買ってもらった思い出は、強く心に残ります。クリスマスプレゼントが毎年に一度の贈り物だとすれば、ランドセルは一生に一度の贈り物です。

子どもが幼稚園を卒園し、小学校に入学する。春の新たな物語は、ランドセルから始まります。この記事では、ランドセルを題材とした名作絵本をご紹介します。今回は「おじいちゃん、おばあちゃんが贈ってくれたランドセル」を描いた2作品を取り上げましょう。

カイくんのランドセル

カイくんのランドセル(おか しゅうぞう・作/ふじた ひおこ・絵/佼成出版社)

「カイくんのランドセル」は、小学校入学をひかえた男の子、カイくんが祖父母の家を訪れるところからお話が始まります。遠く離れた田舎に住まう祖父母とは、滅多に会うことができないのでしょう。おばあちゃんは成長したカイくんの頬を嬉しく撫でて「ランドセルをプレゼントしましょう」と話します。

作品にはハラハラ・ドキドキとする展開はありませんが、穏やかで優しい空気がどこまでも流れています。買ってもらったランドセルを喜んで、食事中や寝るときも離そうとしないカイくん。その様子を微笑ましく見守るおじいちゃんとおばあちゃん。

ふんわりとしたタッチで描かれたイラストが、たくさんのことを物語ります。カイくんの小さい頃の写真が額縁に飾られてあったり、壁におじいちゃんとおばあちゃんの似顔絵が貼られてあったり、繊細な描写のひとつひとつが祖父母とカイくんの気持ちを想像させます。

作中では「ランドセルの今と昔」が鮮明に対比されています。ここが作品最大の見どころです。作中でカイくんが「あおいろのランドセルがいい」と言うと、おじいちゃんとおばあちゃんは驚きます。ランドセルが今のようにカラフルになったのは2000年以降のことで、それまでは男の子は「黒」、女の子は「赤」と決まっていたからです。

おじいちゃんとおばあちゃんは、自分の子どもの頃の話をカイくんに聞かせます。「小学生のときは、手提げかばんだったよ」と昔の写真を見せると、今度はカイくんが驚きます。

ランドセルは明治時代からすでにありましたが、物資のない戦中戦後に子供時代を過ごしたおじいちゃんとおばあちゃんは、ランドセルを背負ったことがありませんでした。今のような革ランドセルにはとても手が届かず、お古の手提げかばんで学校に通う子どもがほとんどだったのです。

このように作品では「ランドセル」を通して、おじいちゃん、おばあちゃんとカイくんが心を通じ合わせる様子が描かれています。とても丁寧な話運びと優しいイラストに、ほのぼのと心温まる絵本です。

絵本を読み聞かせていると、子どもは「おじいちゃんとおばあちゃんにも、小学生のときがあったの!?」と驚くかもしれません。そして、昔のことを興味津々で聞いてくるかもしれません。それはきっと、絵本を通して孫と会話をする素敵なきっかけとなるでしょう。

かぶとむしランドセル (PHPわたしのえほん)

かぶとむしランドセル(ふくべ あきひろ・作/おおの こうへい・絵/PHP研究所)

「かぶとむしランドセル」は、おじいちゃんから孫のみっちゃん(男の子です)にランドセルがプレゼントとして届けられるところからお話が始まります。

主人公のみっちゃんは、おじいちゃんからの贈り物を喜びません。おじいちゃんがくれたのは、とってもヘンテコなランドセルだったからです。ランドセルはカブトムシの形をしていて、なんと生きています。「~だに」という特徴的な言葉遣いでしゃべり、6本の脚をモゾモゾと動かします。

かぶとむしランドセルは、学校でいたずらばかりします。給食ゼリーを横取りして食べてしまったり、女の子のスカートめくりをしたりして、みっちゃんを困らせます。なにより、カブトムシの角が生えた、とても変な形をしているので、ランドセル姿のみっちゃんはクラスのみんなの笑い者です。

怒ったみっちゃんは、かぶとむしランドセルを学校の裏山に捨てに行くことを決意します。ここから先の展開は、絵本を見てのお楽しみです。1ページ1ページがユーモアと遊び心に満ち溢れた、すてきな作品です。

作中に出てくるかぶとむしランドセルは、憎めない愛嬌があって可愛らしいです。絵本を読んだ子どもたちも「僕もかぶとむしランドセルほしい!」と目を輝かせること間違いありません。実際、かぶとむしランドセルは困ったことばかりをするのですが、じつはみっちゃんのために行動していることが多いのです。

おじいちゃんはどうしてヘンテコなランドセルをみっちゃんにプレゼントしたのでしょう。

それはきっと、自慢の孫に世界に一つだけの「特別な」ランドセルをあげたかったからでしょう。最初の1ページ目のイラストを注意深く観察すると、みっちゃんの部屋にはカブトムシのプラモデルが置かれていたり、カブトムシのポスターが貼られていたりします。おじいちゃんはカブトムシ好きの孫に、どうしても喜んで欲しかったのです。

ランドセルはひとつひとつが、子どもにとっては特別なものです。個性豊かなカラーも、綺麗な花柄の装飾も、それはもちろん特別なものに違いありません。しかしそうではなく、どのようなランドセルであっても、子どもにとっては「特別になっていく」のです。

私も小学生のときに祖父母からプレゼントされたのは、何の変哲もないふつうのランドセルでした。ですが6年間使ったランドセルは、傷ついてボロボロになっても大切な、宝物へと変わりました。

最初はイヤイヤ背負っていたかもしれない、ランドセル。けれども毎日使っているうちに、特別な存在へと変わっていく。そして気がつけば頼もしい相棒になっている。そんな「子どもとランドセルの関係性」をユーモラスに描いている作品です。

贈り物としてのランドセル

「ランドセルが祖父母からプレゼントされる」という物語の出だしは同じでも、貰ったランドセルを大喜びするカイくんと、嫌がるみっちゃん。ある意味、対照的な2作品です。しかしながら、一番大切な部分は共通しています。

ランドセルには、おじいちゃんとおばあちゃんの孫を想う気持ちが籠められていることです。

ランドセルをテーマとした素晴らしい絵本は、まだまだたくさんあります。小学校入学を心待ちにするお子さんやお孫さんにぜひ、読み聞かせてみてはいかがでしょうか。