子供用ランドセル

【名作絵本のご紹介コラム】とくべつなランドセル

ランドセルは子どもにとって特別なものです。小学校の6年間を肌身離さず身につけてきたランドセルは、もはや自分の分身のように思えてきます。

ランドセルには、外側と内側があります。周りの人に見せて回りたい革張りの部分と、誰にも知られたくない秘密を隠している収納部分。今回は「子どもにとってのランドセルの二面性」を象徴する名作絵本を2つご紹介します。

みてよ ぴかぴかランドセル (ランドセルブックス)

みてよぴかぴかランドセル(あまんきみこ・作/西巻茅子・絵/福音館書店)

「みてよぴかぴかランドセル」は、赤いぴかぴかのランドセルを買ってもらった女の子、かこちゃんがランドセルを背負って野原に出かけるところからお話が始まります。かこちゃんはみんなにランドセルを見てほしくて「みてよ、ぴかぴかランドセル」と歌をうたって歩きます。

すると林の中からキツネ、ウサギ、ネズミの子どもが出てきて、かこちゃんのランドセルを羨ましがります。優しいかこちゃんはキツネとウサギの子に自分のランドセルを貸して、背負わせてあげます。けれどネズミの子は小さすぎて、ランドセルが持てません。ネズミの子はとうとう泣き出してしまいます。

この作品には、かこちゃんにランドセルをプレゼントしたであろうお母さんやお父さんは登場しません。その代わりに動物たちのお母さんやお父さんが登場して、子どものためにせっせとランドセルを作ります。キツネのお父さんが原っぱであぐらを組んで、青い布と裁縫セットでランドセルを手作りするシーンが印象的です。

作中では、人それぞれ……ならぬ「動物それぞれ」のランドセルが素敵に描かれています。キツネの子、ウサギの子、ネズミの子、みんな大きさも色も違います。

かこちゃんのランドセルは大きくて、真っ赤なチューリップの花のように目立ちます。ネズミの子のランドセルは小さくて、タンポポの花のように元気な明るい黄色をしています。ウサギの子のランドセルはコスモスの花のように可愛らしいピンク色です。そしてキツネの子はかっこいい青空の水色。

本作ではそうしたランドセルの色や大きさの個性を「野原に咲いた花」に喩えて、美しく描写しています。文章のひとつひとつの言葉選びが素晴らしく、色鉛筆とクレヨンで描いたような淡く優しいタッチのイラストが想像力をかきたてます。

文章のリズムがとても良いので、音読をするのに向いています。「くるーり」「ことこと」「にこにこ」本文中に散りばめられるオノマトペでリズム良く、ゆっくりと歌うようにして読み聞かせることができます。

ランドセルには「もっと周りの人に自分を見せたい」という子どもの想いが宿ります。それは野原に咲く花々のように個性的で、人それぞれの輝きを見せるものです。すごく細かい点なのですが、作中に描かれるランドセルは色や大きさだけでなく形状も僅かに違います。そうした違いにも目を向けて、子どもたちの個性を育んでいけたらなと思える素敵な絵本でした。

 

【表紙画像が見つかりませんでしたごめんなさい】 

かいじゅうらんどせる(やまなかひさし・作/長新太・絵/小峰書店)

「かいじゅうらんどせる」は、ランドセルを題材とした絵本のなかでは異色の作品です。本作ではなんとランドセルが「倒すべき敵」として現れます。

主人公ののぶとくんは、気の弱そうな男の子です。学校では隣の席に座っているきよみちゃんという女の子に、しょっちゅう意地悪をされます。のぶとくんを引っ張ったり突き飛ばしたりと、きよみちゃんは可愛い外観とは裏腹に少し乱暴な女の子です。

のぶとくんが反抗しようとすると、きよみちゃんは泣き真似をして先生に言いつけるので、逆にのぶとくんの方が先生に怒られてしまいます。子どもの世界にもある理不尽な話ですが、そんな「理不尽への悲鳴」に呼応するようにランドセルに意思が芽生え、大きな怪獣へと変身します。

怪獣となったランドセルは、のぶとくんの願いに応えるために、先生ときよみちゃんを一呑みに食べてしまいます。のぶとくんは先生ときよみちゃんを助け出すだめに「かいじゅうらんどせる」と戦います。ちょっと怖いお話ですが、大人が読んでも面白い絵本です。

ランドセルに宿る想いは「他者に見せたい自分」であるとは限りません。逆に、他の人には隠しておきたい自分の気持ちも、ランドセルの底には押し込められています。作中ののぶとくんは、きよみちゃんに意地悪されても先生に怒られても、自分の気持ちを表に出せずに心のなかに閉じ込めてしまいました。

抑圧された感情はやがて「みんな怪獣に食べられてしまえ!」という強い叫びとなって、ランドセルに投影されます。そう、ランドセル怪獣は、のぶとくんが押し込めていた負の感情の顕現でもあるのです。のぶとくんは、自分の気持ちと真正面から向き合い、戦う決断を迫られます。

ランドセルはいつだって子どもの味方で、子どもを成長させるものです。本作では敵として描かれるランドセル怪獣も、のぶとくんの気持ちの代弁者であり、主人公を成長させるための役割を担っています。

最終的にのぶとくんはランドセル怪獣との戦いに勝利し、先生ときよみちゃんを助け出します。怪獣はふっと姿を消してしまい、まるで何事も無かったかのように元の教室へと戻ります。ですが成長を経たのぶとくんときよみちゃんの関係性は変わっていて、2人は仲直りをします。

大人の気がつかないうちに、子どもはどんどんと成長していきます。楽しい思い出も悲しい思い出も、他者に見せたい自分も他者に隠したい自分も、みんなランドセルのなかに詰まっています。もしもランドセルが怪獣となって暴れだしたとしても、それはやはり子どもの成長にとって必要なことなのです。

本作は「隠していた感情を表に出すこと」をひとつのテーマとして描いています。怪獣になってしまうランドセルは怖いですが、それでもランドセルは子どもの良き代弁者なのだなとしみじみ感じさせられる素敵な絵本でした。

子どもの感情を伝えるランドセル

今回ご紹介した「みてよぴかぴかランドセル」「かいじゅうらんどせる」の2作品は、どちらもランドセルが子どもの感情を伝えるアイテムとして描かれています。

一年生になる喜びをランドセルでめいっぱいに表現するかこちゃんと、隠していた怒りの感情をランドセルに引き受けさせたのぶとくん。対照的な作品ではありますが、子どもとランドセルとの間には切っても切れない絆があることに気付かされます。

もちろん、絵本はそれぞれ読む人によって解釈が異なるもので、だからこそ面白いものです。読めば読むほど、奥が深いのが絵本の世界です。皆さんもぜひ、絵本から新しい素敵な発見をされてみてください。