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小学校で使う筆記用具「鉛筆」の知られざる歴史と雑学

小学校で使う筆記用具「鉛筆」の知られざる歴史と雑学

 

小学生の子どもたちが一番慣れ親しんでいるであろう文房具は、おそらく鉛筆でしょう。鉛筆は優れた筆記用具です。小さな手でも持ちやすく、軽量なので長時間の書き物をしても疲れにくい。芯は堅牢で筆圧が強くても折れにくく、ボールペンと違って急なインク切れの心配もありません。

 

小説家が使うのは万年筆のイメージが強いかもしれませんが、じつは鉛筆をこよなく愛した文豪は多いです。トニ・モリスン、ウラジーミル・ナボコフ、トルーマン・カポーティ、アメリカの著名な小説家たちは、鉛筆で初稿を書き上げていました。

 

この記事では、あまり知られていない「鉛筆」についての歴史と雑学をご紹介いたします。きっと、鉛筆を手にするのが楽しくなることと思います。

 

鉛筆の原点は古代ギリシア時代からあった!

 

鉛筆の原点は、古代ギリシア時代(今から4千年以上前)にまでさかのぼります。当時は「パラグラフォス」と呼ばれる筆記具が用いられ、これは鉛の塊をそのまま使って書き付ける原始的な道具でした。

 

この鉛筆は文字通り「鉛」でできたものであり、羊皮紙に罫線を引く用途に使われました。ご存じの通り、鉛は毒性の強い金属です。うっかり口にでも入れたら命に関わります。当時の鉛筆は子どもが使うにはもちろん不向きなものでした。

 

鉛のペンシルはその後、中世ヨーロッパに引き継がれ、主に画家がカンバスに罫(等間隔の直線)を引くために使いました。かのレオナルド・ダ・ヴィンチは鉛筆ならぬ銀筆でデッサンを描いていたことで有名です。鉛筆も同じように、画家が使う商売道具でした。

 

鉛筆が文字を書く用途として使われるようになったのは、18世紀以降の話となります。まず鉛筆に「鉛」ではなく「黒鉛」が使われるようになったのは、16世紀半ばからだとされます。名前は似ていますが、鉛と黒鉛はまったく別の物質。有毒金属である鉛と違って、炭素の同素体である黒鉛は人体に無害です。

 

一説では1564年にイギリス北西部のとある羊飼いが、黒鉛をはじめて発見したのが(黒鉛を芯とする)鉛筆のはじまりだと言われています。その黒鉛はカシの大木のなかから見つかりました。飼っている羊に印をつけるのに役立つのではないかと、市場に売られたのがきっかけのようです。

 

そしてさらに時は流れ、現在の「黒鉛を木軸で包む形」の鉛筆が誕生したのは、1795年のこと。

 

フランス人のニコラス・ジャック・コンテが鉛筆の製法を確立させ、(私たちにとっても馴染みが深い)HやBの記号で芯硬度を示す鉛筆を作りました。コンテは色鉛筆やクレヨンの生みの親でもあります。

 

紀元前の古代ギリシア時代から鉛筆の元となる筆記具はあったものの、それが現在の「鉛筆」の形となって広まったのは18世紀に入ってから。古いようで新しい、鉛筆はじつに不思議な筆記用具です。

 

 

日本最古の鉛筆は、伊達政宗と徳川家康が所有

 

日本に鉛筆がやってきたのは、江戸時代初期頃とされています。徳川家康や伊達政宗の遺品から鉛筆が見つかっています。文献の記録はなく詳細は不明なものの、当時日本と国交のあったオランダが、贈り物に差し出したもののようです。

 

江戸時代では、筆記用具は毛筆が主流でした。鉛筆が筆記用具として庶民に広まるようになるのはずっと後のことで、明治に入ってからです。1887年に眞崎仁六が、水車を動力に鉛筆生産を始めたのが「国産鉛筆製造」のはじまりといえます。彼の創業した眞崎鉛筆製造所が、後の三菱鉛筆株式会社となります。

 

しかし1900年代に入っても鉛筆はまだ「高級品」の域を脱せず、庶民に手が届く筆記用具ではなかったそう。当時鉛筆を使っていたのは逓信省(郵便局)で働く人たちくらいでした。

 

子どもたちが筆記用具として鉛筆を使うようになったのは、鉛筆の国内生産が活気づいてきた1920年頃からとされます。墨汁と毛筆で書くのとは違い、鉛筆は何度も書いて消すことができる。鉛筆が教育現場に取り入れられたのは、ひとつの大きな革命であったことでしょう。

 

「日本で子どもが使う筆記用具としての鉛筆」の歴史は、じつは100年にも満たないのですね。

 

 

鉛筆の濃さ硬さをあらわす記号

 

鉛筆には「2B」や「HB」など、硬度を表す記号がついています。HはHard(硬い)の略で、数字が大きくなるごとに鉛筆の芯は硬くなります。(その代わりに芯の濃さが薄くなります)

 

三菱鉛筆の発売している10Hの最高硬度の鉛筆は非常に硬く、鉱物に傷をつけてマーキングすることができるようです。

 

反対に、BはBlack(黒い)の略で、数字が大きくなるごとに鉛筆の芯は柔らかくなり、色が濃くなります。例えば9Bの鉛筆では太くてはっきりとした黒い線を引くことができ、主にデッサン用途等で使われます。

 

筆記用の鉛筆では真ん中ぐらいの硬さと濃さを持つ「HB」が定番ですが、小学生用の鉛筆ですと(筆圧が弱くてもはっきりと書ける)「B」や「2B」の鉛筆が人気です。

 

あまり知られていないものとして、「H」と「HB」の中間の硬さを持つ「F」(Firm、しっかりした)の記号を持つ鉛筆もあります。

 

 

見直したい「鉛筆」の良さ

 

今では子どもの筆記用具はシャープペンシルが主流となりつつあります。そして大人は書く道具にペンを使わず、パソコンを使うようになりました。(学校教育にもタブレットPCが導入されはじめ、未来では子どもたちもパソコンで読み書きの練習をするようになるかもしれません)

 

時代とともに鉛筆の出番はめっきり減ってしまい、引き出しのなかに使ってない鉛筆が眠っているよ、という方も多いことでしょう。

 

懐古の念に浸るわけではありませんが、ここで見直したいのが鉛筆の良さです。鉛筆は優れた筆記用具です。

 

シンプルゆえに堅牢で、シャープペンシルよりも壊れにくい。ボールペンのように急なインク切れで書けなくなることもなく、万年筆よりも軽量なため長時間の筆記でも手首が疲労しない。安価なので何本でも予備をストックしておけるし、いつでもどこでもさっと取り出して手軽に書けます。

 

鉛筆は、お風呂場でも(気圧変化のある)飛行機のなかでも宇宙空間でも、どこでも筆記の機能を果たせる数少ない文房具です。

 

それに、使い古した短い鉛筆は、良き思い出となります。使い終わったちびっ子鉛筆を大切に保管しているコレクターは意外と多く、それは今まで自分が頑張って勉強してきた(書いてきた)ことの目に見える証となります。

 

素朴ながらも今なお魅力の衰えない、鉛筆を良き学習の友としたいものですね。

 

参考文献

 

なお、本稿の執筆には下記の文献を参照いたしました。鉛筆や他の文房具の歴史についてより深く知りたい方にはぜひおすすめしたい、知的好奇心をくすぐられる大変面白い書籍です。

 

『文房具の研究―万年筆と鉛筆』中公文庫編集部 編(中公文庫)

『最高に楽しい文房具の歴史雑学』ジェームズ・ウォード 著(エクスナレッジ)

『頑張る日本の文房具』シリーズ知・静・遊・具編集部 編(ロコモーションパブリッシング)

『ビジュアル版 学校の歴史〈第2巻〉文房具・持ち物編』岩本 努、渡辺 賢二、保坂 和雄 共著(汐文社)

【公開日】2017/05/26